3.接触

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 彼が俺を受け入れてくれたおかげで、こうして姉ちゃんの役にも立てる。  俺は手元の資料を眺めた。  弘毅の愛人の名は、古城里菜(こじょう りな)。二十九歳で、古城物産の社長令嬢であり、総務部所属。受付嬢だ。  派手な容姿と社長令嬢という肩書に群がる男どもを喰い漁るのが、趣味であり特技。  弘毅の会社が古城物産と取引しているらしく、その関係で二人は知り合ったと思われる。  姉ちゃんが仕込んだボイスレコーダーと、弘毅のスマホからコピーしたメッセージの内容から、二人の関係は既に一年以上で、里菜は弘毅との結婚など望んでいないよう。不倫というスリルを楽しんでいるだけのようだ。  メッセージの内容から、ふたりが毎週金曜日に会っていると踏んだ俺は、里菜を見張った。  スマホを見ているふりをしながら、写真を撮る。  受付で笑顔を振りまく姿。定時ぴったりに立ち上がり、十分後には通用口を出てくる姿。ミニスカートでケツを振りながら歩く後ろ姿。  どこをとっても姉ちゃんとは似ても似つかないどころか正反対の女は、俺が以前働いていたクラブのある辺りに向かう。  その辺によく現れることは調査済みだ。  だから、今日の俺はホスト仕様。  ダークグレーのスーツにワインレッドのシャツを着ているが、今は目立ちたくないからコートを羽織って襟を隠している。  伸びていた髪を切り、ワックスで毛先が無造作に遊ぶように整えた。  すっかり閉じたピアスの穴もこじ開け、シャツと同じ色の石がついたピアスをねじ込んだ。正直、ちょっと痛い。  いつもは入れているカラーコンタクトも外した。嫌いな青い瞳は、必要以上に女の興味を惹く。  小道具も用意した。
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