3.接触

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  ***** 「誰? このふたり」  遼平さんが俺の頭のてっぺんに顎をのせて、パソコンを覗き込む。 「重いんですけど」  ディスプレイに映っているのは、里菜のマンションに入って行く、腕を組んだ弘毅と里菜の後ろ姿。  遼平さんがクリックすると、二人がお互いを見る横顔に変わる。  その次は、顔のズーム。 「まだまだ、下手くそだな」  遼平さんの言う下手くそは、撮影のこと。 「自分を基準にしないでください」 「動画はないの?」 「次は動画にします」 「だね」  遼平さんが喋る度、頭のてっぺんが押されて痛い。  遼平さんは高校で写真部に所属していて、賞も取ったことがあると言っていた。  今でも、休みの日には風景や動物を撮影しているらしい。 「で? この二人は?」 「俺の姉ちゃんの旦那と愛人」 「へぇ。面白そうなことしてんね。どうすんの、これ」 「姉ちゃんの離婚の――」 「――離婚すんの?」 「はい」 「証拠集め?」 「……まぁ」 「歯切れ悪いね」  浮気の証拠を揃えて、姉ちゃんが有利な条件で離婚できたらいい。  姉ちゃんにはそう言った。  嘘じゃない。 「復讐?」  低い声と同時に首にかかっていた重みがなくなる。 「シスコンだもんな」 「……」 「否定しないんだな」  遼平さんが隣の席の椅子を寄せて、座った。  事務所には俺と遼平さんしかいないのに、なぜか机は四つある。  横並びの向かい合わせで。  事務所っぽいからそうするそうだ。  来客が少ないから俺らの昼寝用になっている二台のソファも、それに挟まれているローテーブルも。
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