3.接触

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 意味がわからない。  姉ちゃんに興奮するとか、良いことでも綺麗なことでもないじゃないか。  遼平さんが両手を組んで、頭の上でうんっと伸ばす。 「ま、必要になったら遠慮なく言え」 「はい?」 「俺のチ〇コ」 「いや――」 「――今日のところは、代わりにコレをやるよ」  ヨレたシャツの胸ポケットから取り出したものを俺の前に置く。 「薬?」  病院で処方されるような、銀色のプレートに青い錠剤。 「ハ〇シ〇ン?」 「使い方はネットで調べな」  遼平さんは俺の肩を軽く叩くと、事務所を出て行った。  俺は言われた通りに、薬の名前をネットで検索する。 「睡眠導入剤……」  どうしてこんなものを持っているかは、聞かない。  遼平さんには俺の知らないコネがあるらしく、時々驚くものを持っている。  それは物だったり、情報だったり、人だったり。  とにかく、ホストなんてやってたくせにハニートラップを仕掛けられるほどの経験値がない俺には、必要そうだ。  俺は薬を財布に入れた。  財布を尻のポケットに突っ込んだ時、机の上でスマホが唸りだした。  ヴーヴー言いながら、机の上で跳ねる。  スマホに表示された名に、俺はニヤリと口角を上げた。 『Gloria』  俺は〈応答〉をタップして耳に当てた。 「もしもし」 『テル? お前指名のお嬢が来てるけど?』 「すぐ行きます。適当に飲ませておいてください。金、持ってますよ」 『りょーかい!』  スマホを机に放ると、ソファに掛けておいたスーツに着替える。  獲物がかかった。  さぁ、始まりだ――!
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