3750人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
4.仕掛ける
俺が店に着くと、なぜが里菜の隣には遼平さんがいた。
さっきと同じ、ネイビーのヨレたシャツにオフホワイトのスラックスという格好で。
足を組み、片手にはグラスを持ち、もう片方の手は里菜の肩を抱いて。
「なに、やってんですか」
色々な意味を込めて言った。
「忘れモン取りに来たら、イイ女がお前待ってるって言うからさ?」
里菜は、ボルドーのニットにグレーのタイトスカートで足を組み、遼平さんに寄りかかってシャンパングラスを揺らしている。
ニットは肩が出る形だから、遼平さんの手は素肌に触れていて、指先でくすぐったりしている。
「かわいい後輩の女、退屈させらんないだろ?」
誰が可愛い後輩で、誰がイイ女かはさておき、里菜は随分とご機嫌だ。
既にボトル二本目だというし、店側も文句ないだろう。
俺は遼平さんをジロリと睨む。
「睨むなよ。お前から奪おうなんて思ってねぇよ?」
これ見よがしに、里菜の肩にキスなんかする。
里菜に照れや動揺はなく、むしろそうされて当然と言わんばかりに遼平さんの太ももに手を置く。
「座ったら?」
俺と遼平さんとで里菜を挟んで座ると、すぐに里菜がグラスを傾けてきた。
テーブルの上のボトルから注ぐ。
「テルは? 飲むでしょ?」
酒は好きじゃない。
店にいた時も、断れるときは断っていた。
だが、今は断れる時じゃない。
そう思って諦めた時、遼平さんが里菜の肩を抱き寄せた。
「帰り、運転させるからテルは飲むな」
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!