4.仕掛ける

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「俺、今日はオフだし。里菜持ち帰ってもルール違反じゃないし?」 「そんな大きい声で言っちゃっていーの?」 「いーの、いーの」  里菜は遼平さんと顔を寄せてくすくす笑っている。  遼平さんがどういうつもりで店に来て、里菜に近づいたかはわからない。  案外、里菜とヤりたいだけかもしれない。  利害が一致しているなら、いい。  三十分ほど店にいた。  俺は里菜の隣に座っていただけ。  遼平さんが里菜を攻略するのを見ていただけ。  とにかく、三十分して、店を出た。  店からは感謝された。  一時間弱で三十万。しかも、人件費はかかっていない。  遼平さんの赤いアウディは店の裏の駐車場にあった。  二人で後部座席に乗り込み、俺は運転席へ。  遼平さんはこの車をかなり気に入っているが、乗るより眺めていたいらしく、滅多に運転しないしさせない。  俺が運転したのも片手で数える程度。 「どこ行くの?」  里菜が聞く。 「どこがいい? 俺が出すのはラブホ代までだけど」 「サイッテー」 「じゃあ、やめるか?」 「どうしよっかなぁ」 「勿体つけて俺にオネガイさせようってなら、無駄だぞ? 女はお前だけじゃねーし?」  ミラーで見ると、里菜は少しムッとした表情をして、少し視線を彷徨わせた。  ミラー越しに目が合った。  逸らすのもおかしな気がして、逸らさずにいた。  ツンデレのツンのみで女を手玉に取る遼平さんには、現役時代も店のみんなが不思議がっていた。
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