1.疑い

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*****  幼稚園バスから懸命に手を振る息子を笑顔で見送る。  どんな朝でも、だ。  家に帰り、掃除、洗濯をする。  ごく一般的な専業主婦の朝。 「今日はなににしよう......」  掃除機をかけながら、ひとり呟く。  買い物に行かなければならないのに、財布は空っぽ。  今月も赤字だ。 「もう......っ」  誰にも言えない苛立ちを吐き出す。  夫が妻の財布からお金を抜き取る。  どこの家庭でもそうなのだろうか。  誰にも、聞けない。 「夜ご飯......」  ヒントを求めて幼稚園の給食メニュー表の、  今日の日付を指さす。  カレーライス。  しまった。  水色の服を着せてしまった。  見逃した朝の占いは、きっと最下位だったろう。  昼少し前に買い物に行くと、幸大と同じ年頃の女の子がお菓子売り場にしゃがみ込んでいた。 「こぉら! 勝手に――」 「――パパ! チョコ買って!」  パパと呼ばれた男性がため息をつき、しょうがないなと困り顔を見せた。 「ママに内緒だぞ? ほら、早く帰ろう。ママの具合が悪くなったら大変だ」 「じゃあ、ママにもチョコ!」 「すぐには食べられないかもしれないぞ?」 「お腹の赤ちゃん、チョコ好きじゃない?」  チョコレートを手に持った女の子を、パパが抱き上げてカートに乗せる。
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