4.仕掛ける

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 そういうキャラを作っているならまだしも、素なのだ。  もちろん、冷たくされて泣く客もいた。  そういう客は別のキャストが優しくすると、それはもう上客となる。 「けど……ザンネンだな?」  里菜の視線が遼平さんに移る。 「なにが?」 「お前、ヨさそうだと思ったんだけどな?」  里菜の耳元で囁き、そのまま耳たぶに口づける。  激レアな遼平さんの『デレ』。  これでも、そうなのだ。  俺には一生、真似できない絶妙で珍妙なバランス。 「うち、来る?」  ――――っ!  願ってもないチャンスに、ミラーをガン見する。  遼平さんは何でもないような表情のまま、里菜の肩を抱いている。  里菜は里菜で、なぜか俺を見ている。 「気兼ねなくデキるでしょ? 二人でも、三人でも」  ……はぁっ!?  ミラー越しに舐めるようにじっとりと見つめられ、吐きそうだ。  だが、遼平さんはやっぱり眉ひとつ動かさない。 「お前、そういうの好きなんだ?」 「ふふっ。興味、ない?」 「俺的には、女が多い方がいいんだけど?」 「そんなにデキるの?」  里菜がクスクスと笑いながら、視線を落とした。  どこを見ているかは、見なくてもわかる。  マジで、吐きそう。 「ま、三人目の出番があるかはわかんねーけど? 行くか」  里菜の口から住所を聞く。  知らない振りして、目印なんかも。  そして、運転した。  後ろでウォーミングアップが始まっていたが、気にしなかった。  それどころじゃない。
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