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里菜の部屋に入ったら、やらなければいけないことを頭の中で整理する。
念のために、最低限の荷物は持ってきた。
カメラとボイスレコーダーは、電池タイプと充電タイプの両方を持ってきた。里菜と遼平さんがヤッてる間に、素早く仕込まなければ。うまくいけば、里菜のスマホに監視アプリも入れたい。
あとは――。
探偵業の『ような』仕事はしても、探偵ではない俺は、はっきり言ってここまでしたことがない。
不倫している男女を見張って証拠写真を撮るとか、食事中の二人の近くで会話を録音するとかが、精々だ。
緊張なのか不安なのかわからないが、とにかくハンドルを握る手に力が入る。
その時、ポケットの中のスマホがヴヴッと震えた。
信号で止まり、確認する。
遼平さんからだ。
〈着いたら、薬を砕いて飲み物に入れろ。眠らせる〉
ミラーで視線を向けると、目を開けたままキスしている彼と目が合った。
俺は、頷く。
着いたら飲み物を用意すると言ってキッチンに行き、薬を砕いてグラスに入れる。
早ければ二十分くらいで効いてくるってネットに書いてあったから、それまでしのげば……。
頭の中で手順を考える。
薬が効くまでは、里菜に誘われても適当に応じていなければならない。
いきなり三人で、とか言われたらどうすれば……。
早く着いてほしくない道のりほど空いていて。
いや、その方が良かったのかもしれない。
既に半裸の里菜は、今にも遼平さんに跨る勢いだ。
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