4.仕掛ける

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「早くぅ――!」  まだ、意識はしっかりあるようだ。  俺はキッチンに行くと水を一杯飲んだ。  部屋の中を見回して、カメラや盗聴器を仕掛けるのにいい場所を探す。  バックパックを持って、まずはコンセントを見て回る。  昔ながらのコンセントカバーを外して盗聴器を仕込むより、できれば既に差し込まれている充電器かタップとすり替えたい。  スマホの充電器が一番怪しまれないのだが、俺自身がそうであるように寝室にあることが多いはず。  適当な場所がなければ、仕方がないがボイスレコーダーを隠す。  数日で回収に来なければならないのがまた問題だが。  リビングとキッチンのコンセントには何も挿していなくて、俺は先にカメラの設置場所を探すことにした。  高い場所から撮影できればベストだが、背の高い家具がない。  冷蔵庫はキッチンの奥にあるから、キッチンしか写せない。  どうしたものかと考えていたら、カチャリと小さな音がした。  ハッとして振り返ると、遼平さんが寝室のドアから顔を出し、手招きしている。  念のために足音を立てないように歩く。  彼は俺の耳元に顔を寄せ、小声で言った。 「寝室にスマホの充電器がある」  俺はバックパックからスマホの充電器を取り出し、握った。  そっと寝室に入る。  里菜はベッドで眠っていた。  恐らく全裸なのだろう。  遼平さんの手によってタオルケットがかけられているが、肩や足が覗いている。
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