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遼平さんは里菜の様子を窺い、俺はベッドボードのコンセントに挿し込まれた充電器を外し、盗聴機能付きの充電器に挿しかえる。
リビングには、ペン型のボイスレコーダーをソファの背後に置いた。
見つけても、落としたのだと思うはず。
あとは、カメラだ。
遼平さんがよく見ている探偵ドラマと違って、今の家にはカメラを仕掛けられる換気口なんてない。
時間があればパソコンに盗撮アプリを仕込めるのだが。
そう言えば、パソコンやタブレットが見当たらない。
見回すと、ソファ横のサイドテーブルの上にあった。
あまり使われていないのだろう。
畳まれたノートパソコンの上にファッション雑誌が積まれている。
雑誌をよけると、パソコンの脇にあるスマホが目に入った。
電源ボタンを押すが、反応がない。完全に充電が切れているらしい。
俺はそのスマホを持って寝室に行き、里菜のバッグからスマホを探す。
やはり。
スマホはちゃんとあって、俺が見つけた物より新しい機種。となると、これは機種変更前の古い機種だろう。
金持ちはスマホの下取りもしねーって?
だが、俺には都合がいい。
俺はスマホを充電し、電源を入れた。
そして、中のデータをすべて、俺のパソコンに転送する。更に、盗撮アプリをインストールした。
これで、このスマホのカメラを乗っ取れる。
Wi-Fiに繋がっているから、録画されたデータはネット経由でいつでも見られる。
あとは、このスマホを常時充電できれば完璧だ。
古いスマホが充電されっぱなしだったら、さすがに不審に思うよな。
俺はスマホを充電しつつ、リビングか寝室を撮影できる場所を探す。
「輝」
遼平さんが寝室から出てきた。
「まだか?」
「コレの置き場が――」
言い終わる前に、スマホをかすめ取られた。
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