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コードに繋がったままのスマホを持って、遼平さんが部屋の中をじっくり見回す。
「案外、堂々と置いておいた方が良かったりするんだよな」
遼平さんは壁に掛けられたテレビに近寄る。
それから、テレビのすぐ下の壁面収納棚に置かれたDVDレコーダーや時計を見る。
そうか。
レコーダーの配線なんて誰も見ない。
常時充電できるし、レコーダーの陰になっていたら見えにくい。
遼平さんはレコーダーの背面に充電器を挿しこみ、スマホを横向きに、カメラ部分だけがレコーダーからはみ出るようにして置いた。
俺はアプリで接続と、映像を確認する。
立っている遼平さんは見えている。
寝ころんだりしてしまっては見えないが、部屋に入ってきた人物はわかる。
俺は遼平さんに向かって頷いた。
「じゃ、行くぞ」
部屋の中を見回して、目覚めた里菜が不自然に思うところがないかを確認する。
大丈夫だ。
パタンと音がして、目を向ける。
遼平さんがキッチンを物色していた。
「遼平さん?」
冷蔵庫からシャンパンを取り出す。
「これ、撮っとけ」
シャンパンを? と思ったが、彼が指さした先には薬のプレートがあった。袋も。
言われた通りに、スマホで撮影する。
ピル……。
不倫している女の必須アイテムと言ったところか。
遼平さんはピルを元あった通りに戻す。
「それ、持ってくんですか?」
シャンパンを指さすと、遼平さんがニヤリと笑った。
「さすが、イイモン揃えてるよな」
瓶にキスをする。
「起きる前に行くぞ」
俺たちは、そっと部屋を後にした。
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