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男と女の駆け引きは、俺にはやはり難しい。
『里菜、明日また店に行くぞ』
遼平さんの予言めいた言葉は、見事的中した。
目を覚ました里菜は、薬のせいかやたら水を飲んでいた。そして、ずっとスマホを弄っている。
相手は遼平さん。
遼平さんは仕事用のアカウントを教えたらしく、里菜がメッセージを送る度にアカウントを共有しているパソコンにポップアップが出る。
〈なに、勝手に帰ってんのよ〉
〈いきなり寝落ちしといて、なに怒ってんだよ。サイアク〉
〈起こしてくれたらいいじゃない〉
〈なんでそんなめんどくせぇことしなきゃなんねーんだよ〉
喧嘩してるようにしか思えないメッセージの応酬の結果、遼平さんが返信をやめた。
〈お前、うぜぇ〉
その後も里菜からはメッセージが届いていたが、パタリとやんだ。
遼平さんから、しばらく接触するなと言われ、店には里菜が来ても俺と遼平さんは休みだとかVIP対応してるとか誤魔化してほしいと頼んだ。
そして、実際に里菜が店に来たと連絡を貰って、さすが遼平さんと感心していいのか、この人ナニモンだよと訝しんでいいのかを迷った。
以前『輝はその気になったら俺以上になるよ』なんて言われたが、皮肉だったのだろう。
アンタみたいな男がそこらにいたら、どのホストクラブも商売になんねーだろ。
日中、仮眠しようとベッドに横になると、スマホが鳴った。
姉ちゃんからだった。
『輝?』
俺が声を発するより先に、姉ちゃんが俺を呼んだ。
「どうしたの、姉ちゃん」
『ね、輝。ホストに戻ったりしてないよね?』
「は!?」
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