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ママは妊娠中で体調が良くないから、パパが子供と買い物に来ているのだろう。
子供......か。もう、作り方も忘れちゃったな......。
幸大を身籠ってから今日までの七年ほど、私は夫に触れられていない。
同じくらいの年のママが二人目、三人目を妊娠し出産するのを、羨んできた。
『兄弟で年が離れすぎるんじゃない?』『一人っ子は可哀想だよ』なんて言葉に傷ついたのはもう過去のこと。
できるはずがない。
シてないんだから。
『もう、お前に欲情しない』
そう言われたのは、三年位前。
幸大が二歳になった頃から二人目が欲しいと思っていた私は、お義母さんから二人目の予定を聞かれたタイミングで夫に聞いた。
『お義母さんも言っていたけど、二人目......欲しくない?』
その答えがアレだ。
それ以来、夫婦間で子供の話はしていない。
お義母さんにどれほど催促されても、責められても、何も言えない。
言えるはずがない。
弘毅さん、私じゃ勃たないんですって――。
チョコレートを握りしめた女の子とその父親がレジに向かう姿を眺め、私はため息をついた。
あのパパは、ママの財布からお金を抜いたりしないのだろう。
わかっている。
うちが、おかしい。
私たち夫婦が、おかしいのだ。
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