4.仕掛ける

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『弘毅さんが……、輝が街で客引きしてたって』 「ああ」  愛人と一緒のところを見られたくせに、そのことは伏せてまた、俺の仕事のことで姉ちゃんを責めたのだろうか。 「戻ったフリをしただけ」 『なんで!?』 「仕事で。客引きのフリして夜遊びする対象者を監視してたんだ。俺がサラリーマン風って、無理があるだろ?」  俺のしていることを、姉ちゃんに言うつもりはない。  絶対に心配するし責任を感じる。 『危ないことしてない?』 「してないよ」 『本当に?』  姉ちゃんの心配そうな声に、俺は心底ホットする。  愛されている、と思えるから。  姉ちゃんの中ではきっと、俺は子供の頃のままなのだろうと思うと複雑だが。  それでも、嬉しい。 「大丈夫だよ。それより、旦那の浮気の証拠集めが終わるまでは、我慢しててよ」 『……うん』 「マジで。先走って離婚したいなんて言い出さないように!」 『うん』  姉ちゃんはすぐにでも離婚を切り出そうとした。  が、言い逃れできない証拠を揃えて、調停なり弁護士なり、とにかく第三者に入ってもらうように言い聞かせた。  姉ちゃんには、弘毅の鞄にレコーダーを仕込むのと、無理のない程度に弘毅のスマホのメッセージアプリのデータを俺に転送するように言ってある。 『最近ね、弘毅さんの帰りが早いの』 「ああ。愛人とは会ってないみたいだね」 『知ってたの?』 「まぁね」  俺が里菜に接触した夜から、二人は会っていない。  弘毅は会いたくて、というかヤリたくて連絡しているのだが、里菜が無視している。  そして、里菜は遼平さんを追いかけて、連日『Gloria』に通っている。
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