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ここでようやく、カメラが弘毅の姿を捉える。
ネクタイを緩めながら、鞄を置く。鞄の中には、恐らく姉ちゃんが仕込んだレコーダーが入っている。
『私とデキなくて、溜まってるでしょ? 奥さん相手でもシたくなったんじゃない?』
里菜がグラスを置き、立ち上がる。
『そうだな。あんなのでも、目を瞑ってお前を思い浮かべたら、勃つかもな』
あんなの?
『ふふっ』
里菜が鼻で笑う。
その表情まではよくわからないが、きっと優越感に浸っているのだろう。それか、会ったことのない不倫相手の妻を嘲笑っているのか。
『ね。今日は泊って行ってよ』
『は? 無理に――』
『――中出し、させてあげるから』
「溜まってんのはお前だろ、ってな」
耳元で遼平さんの声。
モニター内の里菜と弘毅に夢中で、帰ってきていたことに気が付かなかった。
遼平さんはスティック付きの飴を咥えていた。ドラマの探偵が事務員に禁煙を強いられて、仕方なく飴を咥えているのを見て、真似しだした。
どこに行っていたのか、スーツを着ている。普通にネイビーの。
『めちゃくちゃ激しいの、シて』
囁くように、それでいてはっきりと聞こえた女の声がしてモニターを見ると、スマホの真ん前で里菜と弘毅がキスをしていた。
正直、目を瞑りたい。
「不貞の証拠としてはバッチリだけど、公的には認められないんだよねぇ」
盗撮、盗聴はそもそも違法だ。
『いいのかよ。デキたりしたら――』
『――ピル飲んでるから大丈夫。でも、もしデキたらどうする?』
『俺に聞くなよ』
お互いに服を脱がしながら、キスをし、お喋りまでして忙しい。
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