4.仕掛ける

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『私と結婚したら、古城物産の次期社長よ?』 『そりゃ、いいな』 『本気で思ってないくせに』  ガサガサ、バサバサと服を脱いでは放っていく。 『そこそこ本気だけどな』 『奥さんと子供を捨てられるの?』 『古城のトップと比較になるもんじゃねーだろ』  弘毅が頭を下げて、里菜の胸にしゃぶりつく。 『あ……んっ! ……なら、なんで結婚なんかしたのよ』 『親の面倒見させるため?』 『私は……っ見ないわよ』 『だから、黙って面倒見そうな女と結婚したんだろ』 『サイテー……っ』 『欲しがってた家族を与えてやったんだ。感謝されてるさ』 『あんっ! も、挿れて。挿れてぇ!』  目の前が暗くなる。  遼平さんの手が、視界を塞いだから。  里菜の喘ぎ声だけが聞こえる。 「輝、どうしたい?」 「……殺してやりたい」 「姉ちゃんが泣くぞ」  わかっている。言ってみただけだ。 「後悔させてやりたい。姉ちゃんをバカにしたこと」 「この動画、バラまくか?」 「……いいですね」 「ばかやろ」 「遼平さん」 「ん?」 「貸してください。遼平さんのチ〇コ」 「へい、喜んで」  姉ちゃんはやっぱり泣くと思う。  それでも、きっと、許してくれる。 「遼平さん」 「ん?」 「この二人を破滅させたい」  姉ちゃんに有利な条件で離婚させられたらと思っていた。  これだけの証拠があれば、弘毅は離婚を受け入れるしかない。  だが、それだけじゃ足りないと思ってしまった。 「面白いな」 「面白いですか?」 「ああ。クズが堕ちてくのは、最高に面白い」  耳にはまだ、壊れたおもちゃのように鳴りやまない嬌声が届く。  あの日、幸大がこの声を子犬の鳴き声だと思ってくれて良かった。  心底、そう思った。
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