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「しつこい客の相手放棄したら、謹慎になった」
「マジで!?」
さすが、遼平さん。
店にいなかった理由が尤もらしい。
「だから、お前もあんま、しつこくすんなよ?」
「ふふっ。逃げるから追いかけるのよ?」
里菜もまた、侮れない。
俺は二人の会話を、里菜の隣で聞いていた。
里菜は店長が持ってきたブラックを、俺と遼平さんにも振舞った。
それから、興味津々に俺たちを見ていた新人キャスト三人にも。
勉強のためにと、店長が無料で三人を送り込んできたのは、里菜がVIPスペースでおっぱじめないように、見張りだ。
時々いるのだ。
VIPスペースを仕切らせて、脱ぎだす客が。
脱ぎこそしなくても、短いスカートで足を組み、グラス片手に男の太ももに手を置いているあたり、隙あらば握られそうだ。
新人にはいい経験かもしれない。
俺は新人の頃に際どいところを触られて、はっきりと嫌だと言ってしまい、怒られた。
うまく断るのもプロのテクだ、と。
そんなことを考えていたら、里菜が隣に座る新人に身体を寄せた。
「ね? 遼平と輝のエースってどんな子?」
「え――?」
マズい。
新人が目を泳がせる。
そもそも、新人にとっては俺と遼平さんは謎の人物だ。
OBだとは聞いているだろうが、我が物顔でVIPスペースに陣取っているのだから、ただ者ではないと思われているはず。
それでなくても、二十歳そこそこの新人はVIPスペースのソファに座ったことすらないはずで、かなり緊張しているだろう。
遼平さんを見やるが、なぜか我関せず。
新人を試しているのか。
それとも、俺を試しているのか。
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