5.堕とす

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「しつこい客の相手放棄したら、謹慎になった」 「マジで!?」  さすが、遼平さん。  店にいなかった理由が尤もらしい。 「だから、お前もあんま、しつこくすんなよ?」 「ふふっ。逃げるから追いかけるのよ?」  里菜もまた、侮れない。  俺は二人の会話を、里菜の隣で聞いていた。  里菜は店長が持ってきたブラックを、俺と遼平さんにも振舞った。  それから、興味津々に俺たちを見ていた新人キャスト三人にも。  勉強のためにと、店長が無料で三人を送り込んできたのは、里菜がVIPスペース(ここ)でおっぱじめないように、見張りだ。  時々いるのだ。  VIPスペースを仕切らせて、脱ぎだす客が。  脱ぎこそしなくても、短いスカートで足を組み、グラス片手に男の太ももに手を置いているあたり、隙あらば握られそうだ。  新人にはいい経験かもしれない。  俺は新人の頃に際どいところを触られて、はっきりと嫌だと言ってしまい、怒られた。  うまく断るのもプロのテクだ、と。  そんなことを考えていたら、里菜が隣に座る新人に身体を寄せた。 「ね? 遼平と輝のエースってどんな子?」 「え――?」  マズい。  新人が目を泳がせる。  そもそも、新人にとっては俺と遼平さんは謎の人物だ。  OBだとは聞いているだろうが、我が物顔でVIPスペースに陣取っているのだから、ただ者ではないと思われているはず。  それでなくても、二十歳そこそこの新人はVIPスペース(ここ)のソファに座ったことすらないはずで、かなり緊張しているだろう。  遼平さんを見やるが、なぜか我関せず。  新人を試しているのか。  それとも、俺を試しているのか。
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