5.堕とす

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 グラスの底の青い粉を見つめながら、歯を食いしばる。  本当は、俺がヤルべきことだ。  俺が始めたことだから。  けれど、どう頑張っても、俺のチ〇コじゃ里菜を堕とせない。  だから、遼平さんに頼るしかない。  くそっ――! 「遼平! 早く!」  里菜の声が間近に聞こえた瞬間、心臓を覆っていた黒いモヤが散った。  やるしかない。  俺はグラスにシャンパンを注いだ。  グラスを軽く回す。  もう一つのグラスにもシャンパンを注いで、印として飲み口に指を押し当てた。 「ゴムなんかいらないって言ってるじゃない」  風呂場で遼平さんに迫ったらしい。他の男同様に。 「ピル飲んでるし!」 「いや、無理。病気うつされそ」 「はぁ!?」 「お前が外人と一緒にいんの、見たんだよね」 「だから病気!? ふざけんじゃ――」 「――じゃあ、やめとくか?」  グラスを持って廊下に出ると、二人が対峙していた。  真っ裸で。  一緒に風呂に入っていたとは思えない、険悪なムード。 「俺はいいぜ? ここでやめても」 「ソレで?」と里菜が遼平さんのチ〇コを指さす。  硬く勃ち上がったソレ、を。 「ああ、コレで」  里菜の悔しそうな横顔。  こうも思い通りにならない男を、知らないのだろう。 「あ、輝。ソレくれ」  俺はシャンパングラスを差し出した。  薬が入っている方。  きっと、前回同様に里菜に口移しで飲ませるのだろうと思って。  だが、彼がグラスを受け取るより先に、長い爪が俺の手の甲を引っ搔いた。  そして、グラスを奪い取る。  薬入りのグラス。  里菜はシャンパンを半分ほど口に含むと、ずいっと遼平さんに詰め寄った。 「あ――っ」  遼平さんが飲んではまずい。  だが、咄嗟のことでどうすることもできない。
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