1.疑い

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***** 「幸大、遊びに行くぞ」  週末。  昼まで寝ていた夫が起きてくるなり、息子に言った。  幸大は最近ハマッているアニメのキャラクター図鑑を見て、キャラクターを指さしては名前や必殺技などを声に出していた。  きょとん、と父親を見上げる幸大。 「どこに行くの?」と聞いたのは私。  当たり前の問いなのに、弘毅さんは私を振り返ると表情で『いちいちうるせーな』と言った。 「映画」 「映画って――」 「――いちいちうるせーな。そのアニメの映画を見たいって言ってたろ。お前は俺たちがいない間に掃除でもしてろ」  今度ははっきりと口に出した。 『いない間、ゆっくりしてろ』とか言ってくれるわけじゃないのね......。 「幸大。パパが映画に連れてってくれるって」 「ママは?」  幸大が不安気に私を見る。  幸大がパパに、遊びに連れてってとせがむことがなくなったのは、一年ほど前から。  頼むだけ無駄だと悟ったのだと思う。  こうしてパパの方から遊びに誘われることも、きっと記憶にはないから、戸惑って当然だ。  けれど、幸大の気持ちも、そんな幸大を心配する私の気持ちも理解できない弘毅さんは、すんなり喜ばない息子にすら苛立つ予感。  私は息子の前に座り、目線を合わせた。 「ママはお留守番。ご飯作って待ってるね」 「うん......」 「ポップコーン、買ってもらったら? あ、ジュースはちょっとね? 途中でトイレに行きたくなったら――」
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