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「いらっしゃいませ~」
通い慣れたホストクラブ『Gloria』。
私は昨夜の興奮冷めやらぬ身体を持て余し、開店と同時に訪れた。
「遼平は?」
出迎えたスタッフに、聞く。
「はい?」
「遼平、いる?」
「お客様、他の店とお間違えではないでしょうか?」
「は?」
「当店には、遼平というキャストはおりませんが」
「……は?」
何を言っているの?
もう何度も通っていて、私が聞かなくても『すみません、遼平は出番じゃないんです』なんて言っていたくせに。
「輝は?」
「テツ、ですか?」
「輝よ! テル」
困り顔のスタッフに腹が立つ。
私の後から入ってきた客や、ホストたちがジロジロと見ているのも。
「当店にはおりませんが――」
「――ふざけないでよ! 私を誰だと思ってんの? この店にいくら落としたと思ってんのよ! あれだけVIP扱いしてたくせに――」
「――お客様」
店長がスタッフの隣に並んだ。
「お話をお聞きいたします」
なんなの、これ!?
私の目の前にいる店長は、いつも私に『本日もご来店ありがとうございます』と恭しく礼をするのに。
「お探しのキャストがいらっしゃるようですが、当店には遼平も輝もおりません」
「あんたまで何なのよ! 昨日も来て、VIPルームで――っあんた! 一緒に飲んだわよね? ブラック、飲ませてあげたわよね?」
昨日、遼平と輝と一緒にVIPルームに入った若い男を指さす。
男は狼狽え、店長に目くばせする。
新人だからこんなに高いシャンパンは飲んだことがないと緊張していたくせに、もう忘れるなんて有り得ない。
「申し訳ございません、お客様。やはり別の店とお間違えのようですから――」
「――何なのよ、一体! 遼平を出しなさいよ!」
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