01 Domの本能

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 DomやSubだと診断されると、各都道府県の中枢都市に置かれた施設に一週間隔離される。ダイナミクスについての勉強や、体調不良との付き合い方、それを治すために行うプレイの安全な方法、プレイができないときに飲む薬について担当の職員から懇切丁寧に説明され、最終日には実践とばかりに担当職員とのプレイを行うことになる。DomとSubのプレイは信頼関係がなければ意味がない。一週間という期間は、ダイナミクスについての学習を施す期間でもあり、ダイナミクス性を診断されたばかりの青少年が職員と親しくなるための期間でもある。  俺はそんなことも知らずに一週間のうちに職員と当たり前のように仲良くなって、初めてプレイをして――プレイをしても"本能的にしか"満たされないことを知った。 「一般的にDomは支配的な性、Subは従属的な性と言われていて、それぞれそういう欲求を持っている……ことになってる。お互いの合意の上で命令をしたり聞いたりしてお互いのダイナミクス欲求を満たすのが『プレイ』。これをやらなきゃめんどくさいことに体調が悪くなるんだよ。一応体調不良に対処する薬もあるけど、まあ正直気休め程度だな」  ここまでがNeutralでも知っているある程度の知識だ。DomやSubに偏見がなければもう少しくらい知っている人もいるんだろうけど、実際のところ多くのNeutralにとっては「そんなこと知ったこっちゃない」ので知らない人が多い。ダイナミクスは独立したものではなく連続したものであり、Neutralだっていつダイナミクスが揺らぐか分からないと言われているものの、そこまでの丁寧な認識を持っているNeutralはほとんどいない。 「Domはコマンドっていう命令でSubへの支配欲を満たして、Subはそれを聞くことで従属欲を満たすんだけど、忘れてはいけないのはDomが上の立場ってわけじゃないこと。DomとSubはあくまで信頼によって成り立つものだから、Domが命令を強制するようなことがあってはならない。俺だってお前たちにそういうことはしない。でも悪い大人だとかダイナミクス性が分かって間もない子とかはそこを勘違いしてる奴もいる。みんなもそういう場面に出くわしたらすぐ大人の人を呼ぶんだぞー」  「はあい」と返事をする生徒が何人かいる。 「じゃあ、一旦演習再開。続きはまたあとで」  生徒が「えー」と言いつつもやがて静かになっていく。残りの授業時間と演習問題の量を考えていると、思考は昨日の事件について傾いていった。
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