成人式の日

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 私は成人式に向けて様々な準備を始めた。よく考えれば、この一ヶ月が今までの人生の中で一番自分にお金を使った一ヶ月だった。  だが、実家に暮らしていて、出かけることも多くない私にとっては、レジを打った分だけお金が溜まっていたのだからさほど問題ではない。それに、家にいれるお金もまだ十分に残っていたし、これは私にとって決して無駄な出費ではなかったのだ。  たった一日のためにお金を使い込んでしまった私は、自分を肯定するかのようにそんなことを考えていた。  私はは成人式に向けて、今まで買ったものを確認し始めた。  まずはネイル。成人式の次の日もシフトが入っているため、おしゃれなネイルチップを頼んだ。振袖の色と柄に合わせたお洒落で華やかなもので、所々に入っているラメがお気に入りだ。  美容院にも行った。今までは茶髪にしていたけど、彼に見つけてもらいやすいようにあの頃と同じ黒髪にした。髪質改善のトリートメントをしてサラサラにしてもらい、髪も綺麗に揃えてもらった。  同窓会のために、黒のドレスも買った。シンプルだけど所々に花模様が散りばめられているのだ。そして、暗い印象にならないように、パールのピアスと白い小さなカバンも買った。  私は成人式に向けて念入りに準備を進めた。  一ヶ月お菓子も抜いたし、朝も走った。一ヶ月じゃ大して変化は見られないけど、顔がシュッとしたような気もする。  とにかく、私は平田くんに自信を持って会えるように努力を続けた。  平田くんは今は大学に通っていて、もしかしたら彼女だっていたことがあったかもしれない。私が出会ってきたよりも、もっと多くの人に会ってきたかもしれない。  私は平田くんと会って、何があっても後悔が残らないように、念入りに準備をした。  そして、とうとう成人式の前日を迎えた。  私は緊張で高鳴る心臓を抑えるように眠りについた。  
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!