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まちぶせ。
夜の十時を過ぎて起きていると両親に叱られてしまう。よって、それ以降の弟とのやりとりは、ずっと電気を消した部屋で、布団を被ってスマホでやるようにしていた。
私が高校生になり、弟も小学校四年生になった。彼にもスマホを買ってくれたことに関しては、心底親に感謝していたりもする。
『Xデーまで一週間となったけども。そっちは色々準備できてるの?』
私がLINEで連絡すると、隣の部屋の弟からすぐに返信が来た。
『ばっちり。父さんも母さんも、俺がお菓子作り練習してるのは友達に持っていくためだと思ってるよ。母さんに堂々と教えてもらったのが逆に良かったかもしれない。まったく警戒されてないと思う』
運動神経は良いけれど、手先は全く器用じゃない私。
逆にドジっ子で運動神経はからっきしだけれど、度胸があって細かな作業が得意な弟の香月。私達は姉弟としても、相棒としてもなかなかバランスが取れていた。お互い、自分にできないことを補い合えるというのが素晴らしい。人間正反対な者同士の方がうまくやれるとは聞いていたが、まさに今弟との関係において実感している真っ最中である。
『姉ちゃんこそ、抜かりはないよな?バレたら水の泡だぞ』
『問題ナッシング。ていうか、言いだしたの私の方なんだからね?いっぱい練習したし、シミュレーションもしたから大丈夫!欲しいものもいろいろゲットできたし。やっぱ持つべきものは友達とカワイイ弟だわー』
『おだてても何も出ないっての。……そろそろ寝るな。あーほっぺが痛いー』
『無茶するからだっての。あんたはすぐ怪我するんだから』
弟のほっぺに大きなガーゼを貼った時のことを思いだし、苦い気持ちになる私。小学生男子は怪我が多いのが当たり前だとは聴くが、それにしたって彼はいつも傷を作りすぎである。もう少し物事穏便に済ませればいいものを、意地っぱりですぐ喧嘩をするからこうなるのだ。こっちはいつもハラハラさせられっぱなしだというのに。
『今日は大した怪我じゃねーもん』
弟は、ぷんすこ!と怒ってるようなパンダのスタンプを送ってきた。
『絶対成功させような、姉ちゃん!父さんと母さんの、結婚記念日のサプライズ!』
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