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ここはどこ?
朝の光の中、サトは目を覚ました。
なんだかいつもと様子が違う。
いつも夜着をしっかりと体に纏って薄い布団で寒い朝を迎えていたのに、なんだかとても暖かい。
起き上がってよく見るとみたこともないようなフカフカの布団に寝ていた。
夜着はなく、体の上にかかっていたのもフカフカのお布団だった。
サトは自分の着ているものは浴衣で、昨晩寝たときと変わっていないことにほっとした。だれかにかどわかされ、不埒な真似はされていないようだ。
サトは16歳。呉服屋の下働きをしている。早く朝餉の用意をしなければ。
サトは急いで布団を出たが、そのままドスンと落ちた。
ベッドに寝ていたのだ。
布団を畳もうにも様子が全く分からない。
『夢を見ているのかしら?』
でも、朝餉の支度に遅れてしまうと思い、お布団は掛布団だけ畳んで敷布団の下の方に置いた。
浴衣から仕事着に着替えようとしたが、どこにも見当たらない。
そのうち、家の下の方から
「里~、朝ごはん食べないと部活遅れるよ~。」
年配の女性の声がした。
『はて?部活?そして、朝餉の支度はもう済んでしまったのだろうか。叱られてしまう。』
着るものが見当たらないので部屋を出ることもできずうろうろと歩き回っていると部屋が空いて、見たこともないようなものを着ている年配の女性が
「遅刻するわよ?着替えもまだじゃないの。」
「ほら、とりあえず制服に着替えなさい。」
と、なんだかひらひらしたものをお布団の上に放ってきた。
「もうしわけございません。朝餉の支度に遅れてしまって。これはどのように着ればよいのでしょうか?」
「はぁ?里。あんた大丈夫?」
「確かに私はサトでございますが、このお部屋はわたくしの寝起きしていた女中部屋にしては立派過ぎますし、お布団もこんなにフカフカではございません。そして、このお着替えはなんでしょう?」
「里、今日は部活休んでもいいわよ。何だかおかしいわ。先生には連絡しておくから。」
見慣れぬ年配の女性はサトの浴衣をジ~ッと見ながらもう一度高い所にあるお布団にサトを押し戻した。
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