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レオナルドは現在、リセの最終課程である哲学級に属している。文法級と人文級を終えたレオナルドは、ルネと同様、修辞級を一年で終了した。おそらく哲学級も今年度で終え、来年度は地元イタリアの大学へ進学するだろう。
レオナルドはルネが左手に持っていた冊子を覗き込んだ。
「ああこれ、ソシュール先生が初めて書いたっていう論文? この前の特別講義でもらったの?」
ルネはソーセージを頬張りながら頷いた。
「理解できる? 僕にはちっともわからなそうだけど」
「まあ、何となくね。これを14のときに書いたなんて信じられない」
フェルディナン・ド・ソシュールは高名なスイスの言語学者であり、ジュネーヴ大学の教授である。
先日コレージュ・ド・フランス(フランスの学術研究の頂点に位置する国立教育機関)で特別講義が開かれ、ルイ=ル=グランの学生の多くもその講義を聴講しに行った。
「何ていう論文だっけ?」
「えっとね、『ギリシャ語、ラテン語、ドイツ語の単語を少数の語根に還元するための試論』」
「うわあ。天才って怖いわ」
レオナルドとルネは顔を見合わせて笑った。
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