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「ルネ、見て。あの子たち、さっきからこっち見てるよ。文法級の子かな? ルネのファンクラブかも」
レオナルドはルネを肘で突き、廊下の方を顎でしゃくった。ルネが視線を向けると、10歳ほどに見える数人の生徒がぱっと柱の影に隠れた。
ルネが飛び級を重ね、他の追随を許さない高成績を重ねるにつれ、周りの視線は羨望と尊敬、さらに崇拝に近いものへと変わった。孤児院育ちであることも、片目であることも、名門貴族のモンテスキューが後ろ盾にあることも、いまや「不幸な生い立ちからのし上がった天才少年」を引き立てるためのスパイスでしかない。世間の評価とはまったく勝手なものだとルネはうんざりする。
もう昔のように、ルネを嘲るような者はひとりとしていない。だがその一方で、それまでとは違う類の厚い壁がルネの周囲にできあがっていた。
「ルネは自分たちとは違う、特別な人間だ」という壁である。
下級生は言うまでもなく、クラスメイトでさえ遠巻きにルネを崇める。いまやルネとふつうの友人として付き合おうとするような勇敢な者は、ひとりとしていない――レオナルドを除いては。
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