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「可愛いね。僕らにもあんな頃があったのかなぁ。ルネも出会った頃は小さくて可愛かったのに、ほらもう、こんなにでっかくなっちゃって」
レオナルドは自分より頭ひとつ分背の高いルネに、羨むような視線を投げた。
「俺、いま伸び盛りなんだよね。レオは昔と変わらず、いまも可愛いよ」
「うるさいな! 僕んちは父ちゃんが小さいから仕方ないの! これでも兄弟の中では健闘してる方なんだから!」
そう言ってからかうと、レオナルドは抗議するように机を叩く真似をした。ルネは声を抑えて笑った。
こんな冗談を言い合えるのも、この学校で唯一レオだけだ。
「ソシュール先生さ、ルネが論文について質問をしに行ったらすっごく嬉しそうな顔してたよね。ぜひジュネーヴ大においで、一緒に研究しよう、なんて乗り気になっちゃって。本当によくモテるよね、ルネは」
「それって、モテるって言うの?」
「モテるでしょ。学長も先生たちも、ルネルネって大騒ぎじゃない。まったく羨ましい限りだよ。ルネが飛び級してくれたお陰で、僕もようやく学年一位が取れるようになったから、それには感謝してるけどさ。一位を取ったってルネのせいで全然目立たないし、ちっともモテないじゃないか。ほら、ファンクラブもまだルネのこと見てるよ」
レオナルドはふたたび廊下を指差した。するとキノコのように飛び出していた小さな頭が、ぴょこんと柱の影に引っ込んだ。
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