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「俺じゃなくてレオを見てるんじゃないの?」
そう言うと、レオナルドは大袈裟にショックを受けた顔をした。
「そういう慰めはやめて。僕だって傷つくんだからね」
レオナルドのおどける顔がおかしくて、肩を揺らして笑う。だがルネはすっと表情を戻し、チーズを齧るレオナルドに顔を寄せた。
「だけどそんなモテモテの俺は、レオが一番好きだよ」
レオナルドはチーズをごくりと飲み込み、絶句した。黒々とした眉をしかめ、信じられないという顔をする。
「――そういうところだよね! 自覚がないようだけど、そういうところだからね、ルネ!」
ふたりが談笑する姿を、他の学生たちは今日も遠巻きに眺めている。
ルネほどではないが、レオナルドだって相当の秀才だ。きっと、ギリシャ哲学における魂の不滅性についての議論あたりで盛り上がっているのだろうと推測しながら。
「ところでルネはさ、本気で留学を考えたりしないの? 比較言語学、興味あるんでしょう?」
そうだなあ、ともぐもぐ口を動かしながら、ルネは遠い目をした。
現在ルネは、エコール・ノルマル入学のための準備級にいる。約二年の準備課程を経て入学試験に受からなければ、フランス最高峰のエコール・ノルマルには入学できない。
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