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「で、今後は俺が大家としてお前にこの家を貸してやるよ。そうすればずっとここに住み続けられるだろ?」
その提案を聞き、ルネの身体から力が抜けていく。安堵のせいで目にじわりと涙が浮かんだ。
「――ほ、本当にいいの? あ、ありがとう、アンリ。何とお礼を言ったらいいか……」
「だからやっぱりこの宝石はお前が持ってろよ。いつか本当に必要になる日が来るかもしれないだろ?」
そう言いながらアンリは、ルネから押しつけられた宝石飾りと床に散らばった宝飾品をふたたび袋に拾い集めた。その袋をどすりとルネの膝の上に置き、ルネを下から覗き込む。
アンリの口元には悪戯な笑みが浮かんでいた。
「――でもその代わり、ひとつ条件があるんだ」
「な、何? 俺にできることなら何でも……」
うろたえるルネを見て、アンリは口の端をにいっと引いた。
「今日から俺もこの家で一緒に暮らすことにした!」
「――えっ。ええっ? な、何で」
思いもよらぬまさかの条件だった。ルネは仰天し、声をどもらせた。
「大家には家を管理する責任があるだろ? お前って放っておくと飯も食わないし、熱があるのに医者にも行かないしさ、危なっかしくて仕方がない。俺の持ち家で人に死なれたら後味悪いしね」
冗談まじりにそんなことを言い出し、こんどはルネの方が唖然とした。
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