ふたりの子

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「――お、俺は絶対にやらないからね! 自分でやったんだから、自分で片付ける! このあいだ約束しただろ!」  ルネがそう叫ぶと、アンリはふたりの子どもと顔を見合わせ、困ったように肩をすぼめた。 「よし、マリー=アンヌ。可愛くお願いしてこい」  アンリに背中を押された三歳ほどのブロンドの少女が、ぎゅっとルネの膝に抱きつく。 「ルネ。おかたづけ、してね。マリー=アンヌは、じょうずにできないもん」  天使さながらの愛くるしさに、早速ルネの決意がぐらりと揺れる。 「――で、できるって! マリー=アンヌならできる! こら、オーギュもそれ以上散らかさないで!」  オーギュ、と呼ばれたのは10歳ほどの黒髪の少年だ。ええーっ、とふてくされながら、白の雲間を泳いでいる。 「ああもう! 明日起きたら一緒にお片付けするんだよ! ふたりとも夜更かししないで、早く寝なさい!」  そう言われたふたりは、はーい、と大きく返事をし、ふたたびソファによじ登った。そこから雲の海に飛び込み、雲の欠片を撒き散らしながら部屋の奥へと走っていく。  最後にこちらを振り返ると、ルネ、アンリ、おやすみ!と元気よく言い残し、扉の向こうに消えた。
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