ふたりの子

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「……アンリ。俺さ、さっきからずっと考えてたんだ」  ルネの深刻な声を聞き、アンリは静かに顔を上げた。 「――俺、まだ学生だけど、いまでもそれなりに給料はもらっているし、来年はアグレガシオンに一発で合格して、そしたら教職にも就けると思うし、ここに住む家もあるし――あっ、もちろんこれはアンリのお陰だけど。ふつうじゃありえないような家賃でこんなに立派な家に住まわせてもらって、本当に感謝してるんだ」  アンリはいつものように口を挟むことをせず、じっと黙って話を聞いている。 「あの子たち、このまま孤児院に引き渡すのも不安だし、誰か他にもらい手を探してやってもいいんだけど、でも……何と言えばいいか……自分と重ねて、少し感傷的になっているのかな……あの子たちを見ていると、何というかちょっと……」 「前置きはもういいから、早く言えよ」  痺れを切らしたアンリが口を開く。  ルネは苦笑し、ふうっと大きく息を吐き出した。――何だってアンリにはお見通しだ。  覚悟を決め、胸に生まれた思いを声にした。 「あの子たち、俺が引き取ろうと思う」 「どうせそんなことだろうと思った」  アンリはルネの一世一代の大決断に驚きもせず、呆れ笑いを漏らした。だがすぐに表情を固くした。。
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