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数日が経つと、エミリーはすっかり回復した。元気を取り戻したエミリーはおませで明るい可愛い子で、家にぱっと明かりが灯ったようだった。
ジャンは懲りずに悪戯を繰り返し、日に何度もルネに追い回された。
ルネはふたりを自分の前に座らせ、そのふたつの小さな手を握りしめた。
「ジャンはお父さんに会いたい?」
突然そう尋ねられたジャンは、はっと目を丸くした。
「……だって、生きてるかどうかわからないし」
「もし生きているなら、お父さんを探してほしい?」
ジャンはくちびるを強く噛み締めた。黒い瞳に怒りと涙がじわりと滲む。
「わかんねえよ……もし生きているんなら、俺たちを放り出して家に帰って来なかったことが許せないし、もし死んでるなら……俺たちを残して勝手に死んだことが許せない」
そう口にした瞳がゆらゆらと揺らぐ。ルネがジャンの頭を撫でると、ぽろりと一粒涙が頬を伝った。
「辛いことを聞いてごめんね。でも俺はジャンのお父さんを探してみようと思うんだ」
えっ、とジャンは驚いて顔を上げた。
「それでもし見つかったとしたら、ジャンはお父さんのところに帰りたい?」
ジャンは辛そうに顔を歪ませた。エミリーは不安そうに兄の顔を覗き込んでいる。
「だからそんなの、わかんないってば」
ジャンは手の甲でゴシゴシと乱暴に涙を拭った。その泣き顔をルネは優しく覗き込む。
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