ふたりの子

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 その日の夜は、狭いベッドに三人で寝ることにした。ルネの胸の上に倒れ込んだふたりの子が、きゃらきゃらと笑い声を上げる。  ジャンはベッドの上で跳びはねながら、ルネにこう尋ねた。 「ねえ、これからルネのことは父さんって呼ぶの?」 「いままで通り、ルネでいいよ」  エミリーもみんなで寝るのが楽しいらしく、眠い目を擦りながら頑張って起きようとしている。 「ルネはこれからもずっと、エミリーとジャンといっしょにねるの? エミリー、ずっとみんなでいっしょのねんねがいいなぁ」 「あはは。それはどうかなあ? いつまでも父親と一緒に寝ているのも困り物だしね」  ルネは両脇にふたりを抱え、その幼い温かさを肌に覚え込ませた。 「ねえ、ジャン、エミリー……俺からひとつお願いがあるんだけど」  おずおずと切り出すと、ふたりは笑うのをやめ、腕の中からルネを見上げた。 「君たちを、新しい名前で呼ばせてもらえないかな。俺のとても大事な人の名前なんだけど、毎日その名前を口に出せたら、みんな一緒にいるみたいでとても嬉しい」 「へぇ、どんな名前?」  ジャンが身を乗り出して尋ねる。 「オーギュストとマリー=アンヌ」  久しぶりに、その大切な名を愛おしむように口にした。 「へええ! 案外格好いいね。皇帝とお姫さまみたいだ。ねえエミリー、マリー=アンヌだって!」  ジャンの反応が思ったよりも好意的で、心の中で安堵する。
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