ふたりの子

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 それから1ヶ月も経つ頃には、ふたりは新しい名前にすっかり慣れた。特にマリー=アンヌはまだ幼いせいか、まるで元からこの家の娘であったかのようにルネとアンリに懐いた。  だがオーギュストはいまでもときどき夜泣きをする。泣きながら目が覚めてしまったときには、必ずルネの部屋にやって来た。 「……オーギュ、眠れないの? こっちにおいで」  黒い睫毛を涙で濡らし、ドアの隙間から顔を覗かせる。ルネは優しく手招いた。  読んでいた本を脇に置き、自分の布団を捲り上げると、その隙間にオーギュストは素早く身体を滑り込ませた。  シラミだらけでぼさぼさだった黒い髪は念入りに洗い、櫛で梳かして切り揃えてやった。いまはもう、どこから見ても浮浪児には見えない。聡明そうな眉をしたきれいな子だ。  オーギュストはルネの胸に顔を埋めた。 「……別に寂しくなった訳じゃないから」 「はいはい」 「……ルネがひとりで寂しがってるかなって思ってさ」 「わかってるよ。ありがとう」  オーギュストの不器用な甘え方がいじらしく、思わず笑みがこぼれてしまう。ルネはその痩せた身体を、胸の中にぎゅっと抱きしめた。 「俺もね、主人と一緒に暮らしていた頃は、主人がひとりぼっちで寂しがっているんじゃないかなっていつも心配してたんだ。だから俺がずっとそばにいてやらなきゃと思ってた」 「ルネの主人ってどういう人なの?」
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