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「――ルネは、俺たちとずっと一緒にいてくれる? 離れていったりしないよね?」
それは何度も何度も、埋められない不安を投げつけるように、ルネが主人に尋ねた言葉だった。泣きながら自分にそう尋ねる子どもにそれを約束してやれないことが、どれほど辛く苦しいことなのか、主人と同じ立場になってようやくわかる。
自分にしがみつく幼い背中をぎゅっと抱きしめ、柔らかな髪に顔を埋めた。
主人がしたくてもできなかったことを、自分はこの子にしてやれる。その不安を受け止め、そばにいると約束することを。それをしてやれるということが、どれほど幸福なことなのか。
「絶対に離れたりしない。この先もずっと、オーギュとマリー=アンヌのそばにいる。約束するよ」
安心して眠りにつくまで、何度でも何度でもそう言ってやろう。
12月に入ったある日、アンリが大きなもみの木を背負って家に帰ってきた。子どもたちは目を輝かせ、大騒ぎしながらもみの木を飾りつけた。
応接間の暖炉の上に、三つのサントン人形を飾る。聖母マリアとヨセフと子羊――マリー=アンヌの遺品としてルネが持ち帰ったものだ。
ルネにとっても子どもたちにとっても、これほど丁寧にノエルを迎えるのは生まれて初めてのことだった。
ふたりに内緒でボン・マルシェ(パリに創業したデパート)にプレゼントを買いに行く。マリー=アンヌにはきれいな服を着たお人形を、オーギュストには新しい靴と美しい画材を買った。
偶然だとは思うが、オーギュストも主人と同じように絵を描くのが好きらしい。マリー=アンヌは歌がとても上手だ。
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