地下の怪人

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 エコール・ノルマル(高等師範学校)の最終年度、ルネは国家資格であるアグレガシオン(高等教育教授資格)を一位の成績で取得した。その後、去年の9月にリセ・コンドルセの教授職に就き、初めての仕事に右往左往しているうち、あっという間に半年が過ぎた。  リセ・コンドルセはオペラ座の北、パリ屈指の高級住宅街ショセ=ダンタン地区に校舎を置いていている。創立以降、学生数が徐々に膨れ上がると、それを解消するため1883年、本校舎から少し北に新校舎が建てられた。  新校舎はプティ・リセと呼ばれ、リセ・コンドルセの学生のうち低学年層のみがそちらに通うことになっている。  第六年級に所属する学生は、10歳から10代前半。皆、腕白で生意気で、手に負えない。  廊下へ出ると、隣の教室からひょろりと背の高い青年がひどく疲れたようすで現れた。ルネの姿に気づくと細長い腕を持ち上げ、枝のようにひらひらと揺らす。 「おーい、お疲れさま」 「お疲れさまです、ゴーシェ先生」  ルネが小さく頭を下げると、マクシム・ゴーシェは鷲鼻に皺を寄せて笑った。 「だからもう、マクシムでいいってば。立場は同じなんだからさ」  ルネがリセ・ルイ=ル=グランの低学年だったときに生徒監督を務めていたマクシムだ。  マクシムは猛勉強の末リサンス(学士号)を取得、3年前にアグレガシオンに合格し、リセ・コンドルセに職を得た。現在は第五年級を担当しており、いまではルネの良き先輩教師である。
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