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「お前とこうしているの、いまでも不思議な感じがするよ。まさか俺たちが同僚になるなんてさ。時の流れは残酷だな」
正直な感想に、ルネは軽く吹き出した。
「そうですね。あの頃は、まさか先生と同じ職場で働くことになるなんて、夢にも思いませんでしたけど」
マクシムは腕を組み、不服そうにくちびるを突き出した。
「お前が優秀すぎるから、こっちは追い越されないように必死で頑張ったんだよ。あのときお前に発破をかけるんじゃなかったかなぁ。でも、どうにかぎりぎりのところで先輩の面子は守りきったぞ」
「これから先はわかりませんよ?」
挑発するように言うと、マクシムは苦々しく顔をしかめた。
「そうなりゃこんどはルネに昼飯奢らせるからな。覚悟しとけよ」
極上のブイヤベースをご馳走しますよ、とルネは笑う。
テーブルに注文の料理が届き、ふたりはナイフとフォークを取り上げた。
「……ルネって、いまいくつだっけ?」
鶏肉を頬張りながらマクシムが尋ねる。
「23です」
改めて年齢を聞き、その若さに驚愕したマクシムは目を白黒させた。
「えっ、俺が生徒監督やってたのと同じ歳かよ! いやぁ、まいったな。俺なんてそろそろ31だぞ」
「そろそろご結婚されないんですか?」
豚肉をナイフで切り分けながら、ちらりとマクシムを見上げる。
「……するよ。そろそろ呼び寄せるから、結婚式には来てくれよ」
マクシムは地元のノルマンディーに長いあいだ恋人がいた。無事教職に就き、仕事が落ち着いたらパリに呼び寄せると約束していたのに、もたもたしているあいだに3年が経過してしまったらしい。
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