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照れ臭そうなマクシムの顔を見て、ルネは祝福の笑みを浮かべた。
「おめでとうございます。家に奥様がいれば、いまより少しは太れますね」
「そう願いたいよ」
マクシムは気まずげに白ワインを口に含むと、ルネをじっと見返した。
「……そういやお前ってもう父親なんだよなぁ。お前の人生って、人の数倍の速さで流れていくのな」
ははっ、とルネは笑い声を上げる。
ルネが引き取ったふたりの孤児――オーギュストはもう13歳になり、マリー=アンヌは6歳だ。今年度から家の近くの小学校へ通っている。
「可愛いですよ、子ども。毎日忙しくて息をつく暇もないですけど」
「へえ、いいなぁ。俺も早く欲しいよ。やっぱり男の子と女の子、ひとりずつかなぁ。うーん、3人……4人、はさすがに多いよなぁ」
マクシムはぶつぶつ独り言を言い、目元を綻ばせる。
その姿を見て、思わずルネも笑みをこぼした。
マクシムならきっと、いい夫にもいい父親にもなるだろう。大勢の子どもに揉みくちゃにされるマクシムの姿が、見てきたように目の前に浮かんだ。
「――そういえば、レオナルド、覚えてます? イタリア人の。結婚したらしいですよ、ヴェネチアの幼馴染と」
おお!とマクシムは目を輝かせた。
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