108人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
「そうだ。同級生同士、久々の再会を祝してゆっくり話でもしたらどう? じゃあ俺は先に戻ってるから」
マクシムはサミュエルの肩を叩き、そそくさと校舎に戻っていく。同じように、サミュエルの妻も気を遣ったのか、サミュエルに声をかけ逆方向へと向かった。
ふたりがその場を去ると、サミュエルは足早にルネに近づいた。
「――偶然だな。卒業以来か。お前、どうしてゴーシェ先生と一緒にいるの?」
サミュエルはおずおずとルネに尋ねた。ルネは校舎の方を軽く顎でしゃくった。
「――先生も俺もあそこで教えてるから。いま、昼休み」
そっけなく答えると、サミュエルの顔に感心するような笑みが浮かんだ。
「そうか! その歳でもうリセの教授なんだな。やっぱりお前ってすごいよ、昔から飛び抜けて頭が良かったけど」
突然そんなふうに馴れ馴れしくされても気分が悪いだけだ。
ルネはサミュエルに背を向け、早々と学校へ戻ろうとした。その背中に、サミュエルは慌てて声を張る。
「ルネ――! ずっと、お前に謝罪しようと思ってたんだ!」
ルネはちらりと振り向き、冷ややかな視線を投げた。丸々とした額に、脂汗が浮かんでいる。
「本当に悪かったよ! あの頃は俺も子どもで、相手の気持ちも考えず、馬鹿なことをしたと思ってる!」
「いまさら、何のつもり?」
ルネの冷淡な態度に、サミュエルは少したじろいだ。だが必死に言葉を絞り出す。
「ずっと謝ろうと思ってたんだ。でもお前が俺を無視するし、そのうち飛び級してあまり顔も合わせなくなって――」
「何? 俺のせいだって言いたいの?」
最初のコメントを投稿しよう!