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爽やかな青空が広がる秋のはじめ、パリ郊外の小さな教会でマクシム・ゴーシェの結婚式が執り行われた。
式に参列するため、ルネは漆黒のラウンジ・スーツを新たに仕立てた。
オーギュストには子ども用のグレイのスーツ、マリー=アンヌには水色のシフォンのドレスを。金の巻き毛に花冠をかぶったマリー=アンヌは、花の妖精さながらだった。
気づけばアンリまでちゃっかり参列している。どうやらアンリは花嫁衣装を手掛けるオートクチュール・メゾンで、マクシムの妻にさまざま世話を焼いたらしい。
着慣れない一張羅に身を包み、緊張に顔を引き攣らせるマクシムを見て、ルネは何度も吹き出しそうになった。
初めて顔を合わせた新婦は、薔薇色の肌をした赤毛の女性だった。少し訛りのあるおっとりとした喋り方がとても可愛らしかった。
胸の下で絞ったエンパイアラインのウェディングドレスには、ノルマンディー地方の名産であるリンゴの花の刺繍が広がっている。長いヴェールが秋風になびく姿は、まるで絵画のように幻想的だった。
ルネは積み重なった心労を忘れ、心の底からふたりを祝福した。久々に味わう、明るく幸せな秋の日だった。
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