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ルネ、私の手を握ってくれないか。
その石膏の指を、両手できつく握りしめる。
世界にまた新しい一日をもたらす、清浄な朝の光。
その光の筋が、握り締めた指を透かした。
眩い光の中、輪郭が結合を解いていく。
漆黒の髪も、蒼白い肌も、細やかな光の粒となり、
朝の粒子の中、涙の中へ流れ、溶け合う。
形を緩めた長い指が、ルネの髪をそよ風のように撫で、
くちびるがくちびるに重なり、霧散する。
ありがとう、ルネ。ずっとお前のそばにいるよ。
その愛おしい声が、身体の隅々に染み込み、同化する。
――いや、俺はもうずっと前から、あなたにより形作られたものだった。
この世界であなたに見つけられた瞬間から、身体も思考も心臓も、あなたを中心として回るひとつの小さな星だった。
そしてこれからも、ただあなたのために巡る。
愛してる。愛してるよ、オーギュ。
愛してるなんて言葉が、意味をなさなくなるほど。
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