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「――レオ!」
ルイ=ル=グラン時代に親友だった、イタリア人のレオナルドだ。ふたりは互いに両手を大きく広げ、勢いよく抱擁した。
「うわぁ! 本当にレオだ! 信じられない! どうしてパリにいるのさ」
「久しぶりの家族旅行だよ! せっかくだから革命記念日に合わせてさ」
久々の再会に盛り上がるふたりに、レオナルドの妻らしき、すっと背の高い女性と四人の美少女が合流する。
「レオの娘さん? 全員?」
目を丸くするルネに、レオナルドは参ったとでも言いたげに眉尻を下げる。
「そっ。うちは女の子しか生まれなくてさぁ。でも全員妻に似て美人だろ?」
「そうだね、みなさん美人で、背も高くて」
「だから一言余計だって!」
昔のようにからかうと、レオナルドはルネの脇腹を拳で小突いた。
「四人かぁー。あーあ、ルネだけじゃなくレオにも負けるとはなぁ」
その声で、レオナルドはようやくマクシムの姿に気づいた。
「うわぁ、ゴーシェ先生だ! お久しぶりです! あの頃と、全然お変わりありませんね!」
「変わったよ。苦労続きで髪も真っ白じゃねーか!」
まるで学生時代に時間が巻き戻ったようだった。わいわいと互いの近況を報告し合い、またコンサートが終わった後にとしばしの別れを告げた。
ルネとアンリは人混みをかき分け、自分たちの為に用意された最前列の席に腰を下ろした。
ルネの隣に空いているもうひとつの席は、オーギュストのための席だ。オーギュストはまだ会場に到着していないらしい。ルネはきょろきょろと辺りを見回した。
「オーギュは遅刻かな。鉄道が遅れているのかも」
ふたたび不安げな顔をするルネを見て、アンリが大きく吹き出す。
「お前も少し落ち着けって。開演までまだ少し時間があるし、約束したんだからちゃんと来るよ」
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