考古学者になりたい彼女

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     武蔵野台地と表現すると仰々しいが、要するに関東の中心地域だ。僕の思う『東京』の大半を含むエリアであり、まさに僕たちが暮らしている場所だった。  そんなところに昔の遺跡があるというのは、なんだか不思議な感覚だが……。  日曜日。  待ち合わせの駅に行くと、薄黄色のブラウスとベージュのスカートという姿で、相田さんが立っていた。  遺跡の散策というから、一昔前に流行(はや)った森ガールや山ガールみたいな格好で来るかと思ったのに……。荷物もリュックサックみたいに背負うタイプではなく、通学時に使っているような手提げ鞄だった。 「遅いわよ、鈴木くん」 「いや、時間通りだろ? それより、そんな軽装で大丈夫か?」 「何言ってるの? 鈴木くんだって、普段着でしょう?」  白いポロシャツと、青いジーンズ。確かに普段着だが、一応は、歩きやすさを考慮したコーディネートのつもりだった。 「私の方は、これがあるからいいのよ」  彼女は頭に手をやって、帽子を強調してみせる。つばの広い白い帽子は、材質こそ違うものの、麦わら帽子をイメージさせる形状で、夏に外を歩くにはピッタリに思えた。 「さあ、出発よ!」    
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