考古学者になりたい彼女

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    「今度の週末は、武蔵野台地の遺跡を散策しましょう!」  相田(あいだ)さんがそう言ったのは、大学の食堂でランチを食べている時だった。二人とも日替わり定食だが、僕はAセットだからミックスフライ、彼女はCセットだからハンバーグがメインのおかずになっている。 「遺跡の散策……?」  思わず聞き返してしまったが、心の中では、妙に納得していた。  大学一年目の僕たちは、授業は一般教養ばかりで、専門的な内容はまだまだ先。特に相田さんは文学部なので、工学部の僕より進路もバラエティに富んでいるイメージだったが、彼女は前々から「考古学をやりたくて文学部に入ったの!」と宣言していた。  実際の『考古学』的な調査は、ゼミや研究室に配属されてからだとしても、今のうちからその真似事として、遺跡の発掘跡を見ておきたいのだろう。 「そうよ! 武蔵野台地からは、旧石器時代とか縄文時代とかの器具が、色々と出土しているの! その一つに、井の頭池遺跡群というのがあって……」  熱を帯びて語り出した彼女の話を、適当に聞き流しながら。  週末は二人でハイキングだな、と僕は考えるのだった。    
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