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思えば、なのは野良ウサギである。
しかも、ネザーランドドワーフの飼いウサギである。
ペットショップで買い叩かれ、元飼い主に捨てられて彷徨い、
狩猟の罠に掛かった時あった。
キツネやイタチや猛禽類といった天敵に翻弄された時もあった。
道路に飛び出して車に轢かれそうになった時もあった。
野良ウサギの身になって、いろんな試練に逢う度に、自分がノウサギとは違うというコンプレックスに悩まされた。
「私って、なんなの?」
自問自答の日々が続いた。
ところがある日、ネザーランドドワーフウサギのなのは、夢の中で1匹のウサギが出てきて話し掛けられた。
「君、誰?」
それが、なのとアマミノクロウサギが出逢った夢であり、何度もアマミノクロウサギが夢に出てきてから、段々憧れが湧いてきて・・・
「ねぇーー。アマミノクロウサギのとこへ行けるトラックってこれ?」
「うん。そこ近くまで行くトラックだけど・・・で、何でアマミノクロウサギに逢いたいんだい?ウサギさん。」
「私!!アマミノクロウサギになりたいんですっ!!」
「はあ?」
トラックの荷台なら降りたとこで出逢った、猫やネズミやスズメ達にネザーランドドワーフウサギのなのはアマミノクロウサギの居る南の国の行けるトラックや行き先や生き方を聞きながら、全国を右往左往して・・・
「やっと・・・行き聞きして来た場所が・・・密林の・・・しかも暗闇・・・って真夜中・・・」
たどり着いたのは、トラックから降りてフェリーに飛び乗ってやって来たとある南の島。
ネザーランドドワーフウサギのなのは、疲労で鼻の穴を全開にして肩で息をながら、暗闇の密林の中を彷徨っていた。
「確か・・・アマミノクロウサギって、皆の話によれば夜行性で、よくこういう場所にひっそりと暮らしていると聞いたけど・・・ん?」
ネザーランドドワーフウサギのなのは、目の前に耳の短い生き物が鬱蒼とした繁みでくつろいでいるのを見付けた。
「すいませーん。」
「あ?誰?どなた?・・・あっ!!」
「『アマミノクロウサギ』って誰ですかぁ?」
「あたいだよ?!って・・・ここは部外者は立ち入り禁止だよ?!何処から来たんだ!!」
アマミノクロウサギのセンカは、その見知らぬ小さなウサギに向かって威嚇した。
「あ、あんたが『アマミノクロウサギ』なの。」
「そうだよ!!それがどうしたんだよ?!」
アマミノクロウサギのセンカはふてぶてしく答えた。
・・・こ、ここに、アマミノクロウサギが居る・・・!!
ネザーランドドワーフウサギのなのは、緊張でドキドキした。
「何しにきたの?!小さなウサギ!?」
アマミノクロウサギのセンカは、目の前の野良ウサギが邪魔そうに思えてイラっとした口調で言った。
「あのぉ~~~わたし、アマミノクロウサギになりたいんですけどぉ。」
「はぁ?!!!」
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