00:始まり-後編-

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 つまり、僕はこの女性と話をすることができるようになったということだろう。  まさか、こんなに早くチャンスが巡ってくるとは思ってもみなかったので、挙動不審になってしまう。 「え、どうしよう……何て打ったら……あ、まずは挨拶からだよな!? えっと、初めまして……」  スマホを握り締める指先は冷たいのに、自然と汗が滲んでいる。  可愛い子と付き合いたいなどと考えていたが。  いざ反応が返ってくると、画面の向こうには異性がいるのだという緊張感で、頭がいっぱいになってしまう。  こういうのは第一印象が大切だ。ここを間違えれば、恐らく返事が返ってくることはない。  震える指で文字を打ち間違えないよう、丁寧な挨拶文を送る。 「いや、ちょっと堅苦しすぎたか……? もっとフランクな方が……」  送信した傍から、僕は自分の書いた文面を後悔し始めていた。アプリの中に、添削してくれる機能があったらいいのにと思う。  だが、チャット欄にはすぐに相手からの返事が届いたのだ。  淡々とした文章に見えるが、自分と話がしてみたいという意思が(うかが)える。 (サクラ……かもしれない、けど)
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