キャロルの探し物

1/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

キャロルの探し物

 今日こそはキャロルに告白しようと、アレックスは心に決めていた。  だから帰り道に口うるさいことで有名なサリーおばさんが立っていようと、枯れた芝生の上で三つ巴になった野良猫がけんかしていようと、巨大なリスがそばで穴掘りしていようと構わなかった。  アレックスはキャロルの鳶色の瞳をまっすぐ見つめて言った。 「キャロル。僕の恋人になってほしいんだ」 「恋人?」と、キャロルは目を泳がせながらおうむ返ししている。  アレックスはばくばく高鳴る胸を抑えながら大きくうなづいた。 「そう、恋人。僕は君の恋人になりたい」 「どうして?」 「どうしてって、そりゃ……。好きだからだよ」 「好きってどういう意味?」 「友達じゃなくて、恋愛対象としての……」  昨日から繰り返し思い描いてきた告白場面。いくつもの返事パターンを想定していたのに、現実はどれにも当てはまらなかった。やはり親友のロンが言う通り、最新の恋愛攻略本を読んでおくべきだったと思うが今さらだ。既に賽は投げてしまった。後戻りはできない。 「もしキャロルが一対一の交際が嫌だって言うなら、まずはお友達からってことで……どうかな?」 「今って友達じゃないの?」 「いや、友達だったね。ごめん、さっきの言葉、忘れて」  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!