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キャロルの探し物
今日こそはキャロルに告白しようと、アレックスは心に決めていた。
だから帰り道に口うるさいことで有名なサリーおばさんが立っていようと、枯れた芝生の上で三つ巴になった野良猫がけんかしていようと、巨大なリスがそばで穴掘りしていようと構わなかった。
アレックスはキャロルの鳶色の瞳をまっすぐ見つめて言った。
「キャロル。僕の恋人になってほしいんだ」
「恋人?」と、キャロルは目を泳がせながらおうむ返ししている。
アレックスはばくばく高鳴る胸を抑えながら大きくうなづいた。
「そう、恋人。僕は君の恋人になりたい」
「どうして?」
「どうしてって、そりゃ……。好きだからだよ」
「好きってどういう意味?」
「友達じゃなくて、恋愛対象としての……」
昨日から繰り返し思い描いてきた告白場面。いくつもの返事パターンを想定していたのに、現実はどれにも当てはまらなかった。やはり親友のロンが言う通り、最新の恋愛攻略本を読んでおくべきだったと思うが今さらだ。既に賽は投げてしまった。後戻りはできない。
「もしキャロルが一対一の交際が嫌だって言うなら、まずはお友達からってことで……どうかな?」
「今って友達じゃないの?」
「いや、友達だったね。ごめん、さっきの言葉、忘れて」
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