◇15. おかあさん【最終話】

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(りょう)。今日はこの絵本にしようか」――図書館を訪れ、本を読む日々。いまは、息子が紙芝居に興味があるのでそれを読むことが多い。キッズスペースで本の読み聞かせをする雨音。いつの間にか息子は雨音の膝のうえで眠ってしまった。外では雨がしとしとと降り続いている……  あの日も雨だったな。  別れを経験して、身が引きちぎられるような思いをしたあの日も。愛する人と三回も偶然の出会いを経験し、そしていまは……。  こんこん、とガラスドアをノックする音がした。雨音は微笑んだ。 『いま寝てるところ』  ドアを開き、靴を脱ぎ……畳のスペースにあがると自分の靴をきちんと並べ直す。そういうところが雨音は好きだった。  やがて彼は雨音の隣に座りそっと……眠る我が子の頭を撫でる、その手の上に自分の手を重ねる。ぬくもりを共有するふたりの胸には、いつまでも、あたたかくてやさしい雨が、降り続いていた。  ―完―
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