◇03. 三度目の君

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 雨音の弟は書店で働いているが、お店のPOPで書評を書いたり、ネットで書いたりしているうちに売れっ子になってそのうち書評家の仕事も増えてきた。文庫本の書評を頼まれたこともあるらしく。というわけで、出版社には顔の利く立場であり。こうしたパーティーにも度々呼ばれる。  芸能人が結婚式を挙げそうな瀟洒なホテルの廊下を進み、エスカレーターのある通路を抜けたときに……ふと。後ろから髪を引っ張られたかのような強烈な感覚を覚えた。  それは向こうも同じだった――らしい。驚きに目が……見開かれていた。 (どうして……あなたが……)  そこにいたのは、紛れもなく、…… 「望結先生。お時間過ぎてますよっ」中から飛び出してきた女性に引っ張られ、連れていかれる――三度目に会った青年。主役らしく、紫のタキシード姿でとっても格好がよかった。ほうっ……と見惚れるくらいに。
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